dimanche 28 juin 2015

Hélix『古フランス語 18 課』第 1 課後半

Laurence Hélix, L’Ancien français en 18 textes et 18 leçons, Armand Colin, 2014 をもとにまとめた résumé.  諸注意は最初のエントリを参照のこと.前回のエントリ:第 1 課前半


第 1 課 (承前)


第 2 部 細かいが重要な事柄:AF における si の語 Tout petit mais essentiel : le mot si en AF


Si は LC で「そのように ainsi」を意味する副詞 sic に由来する.これを従位接続詞 se と混同してはならない.後者は AF において条件の従属節を導入し,FM の接続詞 si に相当する.中世のテクストのあらゆるところに現れ,si は非常にさまざまの語義と用法をもっている.


1. 語源の意味:「そのように」,「こうしたしかたで」 Valeur étymologique : « ainsi », « de cette manière »

Si は語源〔本来〕の意味を保っていることがある.すなわち様態の副詞で,AF の同義語に副詞 issi と ainsi がある.例:Si entra en la maison. (このようにして彼は家に入った)


2. 時間の意味:「次に」,「それから」 Valeur temporelle : « puis », « alors »

複数の行為が継起する文において,si は puis, alors に近い意味,さらに単純に et の意味をもつ.例:Li chevaliers s’est esveillez, si l’ad veüe. (騎士は目覚め,それからそれを見た)

NB : こうした時間の意味は,si が quant のような時の接続詞と相関するときはっきりする.例:Quant ele l’oï, si suspira. (彼女はそれを知ったとき,ため息をついた)


3. 強調の意味:「非常に」,「それほど」 Valeur intensive : « tellement », « si »

この意味は FM にもある.非常にしばしば,強意の si は接続詞 que で導かれる結果節 proposition de conséquence とともに働く.例:Estoit si esbahiz que ne pooit soner mot. (彼はとても仰天しており言葉を発されぬほどであった)

NB : si は接続詞 que と結合することがある.例:Il chaï envers, / si que la teste li seingne. (彼はあおむけに倒れた/そのため頭が出血した)


4. 結果の意味:「それゆえ」,「そういうわけで」 Valeur consécutive : « donc », « c’est pourquoi »

例:La damoisele estoit bele et bien fete. / Si la regarda Gauvains volentiers. (その娘は美しくよくできていた/それでゴヴァン殿下は彼女を喜んで見つめた)


5. 逆接の意味:「にもかかわらず」 Valeur adversative : « pourtant »

この意味は si が et とともに用いられるとよくわかる.例:Molt est sages, et si n’est pas voisous. (彼はとても賢い,それにもかかわらず先見の明がない)


6. 特殊な場合:si com の成句 Un cas particulier : la locution si com (autres graphies : si come, si comme, si cum, si cume)

この成句は比較の意味 valeur comparative (「と同様に ainsi que」,「のように comme」) または時間の意味 (「のときに comme」,「するあいだに tandis que」) をもちうる.

例 1 (比較の意味):Crestïens comence son conte, si com l’estoire le reconte... (クレティアンは話を始める,話がそれを語るように……)

例 2 (時間の意味):Si come il dormoit, une dame entra. (彼が眠っているときに,夫人が入ってきた)


第 3 部 若干の翻訳の指針 Quelques conseils de traduction


  • 翻訳するまえにテクストを全部読む:登場人物を特定し (少なくとも大づかみに) なにが起こるかを理解したあとなら文章を翻訳するのはより容易である.
  • 古風になった語や意味が変わった語を翻訳する:〔現代語の母語話者向けの例示のため省略〕
  • si, et, par, or のような小さな語を無視しない.これらはしばしば翻訳が難しいが,さまざまな節を論理的に配列しており,FM におけると同様 AF においても不可欠のものである.
  • chose, faire, dire のような非常に一般的であいまいな語の意味をなるべくはっきりさせる
  • 動詞の時制を調和 harmoniser させる:中世のテクストでは,著者たちは過去と現在とを行ったり来たりする習慣をもち,同じ段落のなかで,さらには同じ文のなかで,単純過去 (または半過去) と物語的現在 présent de narration [訳注] を交互に使う.これは FM では不可能なので,時制を一貫させること.
  • 時制の一致 concordance des temps を尊重する:AF では義務的でないが FM では強く要求される.
  • テクストの動きに従う:〔これも母語話者向け.節の順番はなるべく保つほうがよいが,S-V-C が今日では自然だということ〕
  • 翻訳を文脈にあわせる:〔テクストの種類と時代によって選ぶべき訳語は異なるということ〕
[訳注] 歴史的現在 présent historique に同じ.


第 4 部 読解と翻訳:オウムの物語 Le Conte du Papegau (15 世紀初頭) (省略)


第 5 部 応用練習 (省略)

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